はじめに
インドネシアをはじめとした東南アジアの国々では毎年11月から4月は雨季にあたり、
スコールと呼ばれる熱帯地方の強風を伴う激しいにわか雨が発生します。
局地的な上昇気流が原因で、ほとんど毎日定期的に降ります。
日本にいてはあまり想像のつかない感覚ですが、段々と空が真っ黒になり、
あれ?何か雲行きがあやしいと思った頃には、、
隣にいる友人の声も聞こえないほど激烈な雨がザーッと降ってきます。
基本的に1時間程度で雨は止むため、多くのインドネシア人はしばらく雨宿りをする場合が多いようです。
そんなインドネシアではこのスコールを利用したとある小さなビジネスが毎年起こっています。
親子には見えない二人組の正体とは
筆者がこのことに気づいたのは、とあるスコールの激しい日にモールの前を歩いていた時のこと。
向こうから歩いてくるのは親子には見えない二人組。
しかも子どもが大人に対して傘をさしかけている。なんとも奇妙な光景。
このような親子にしてはなんだか違和感のある2人組をひっきりなしに目撃したのです。
後に、友人からこの2人組のカラクリを教えてもらいました。
”これは本物の親子ではなく、ビジネスなんだ。
子どもは傘を持っていない大人に対して傘をさしかけて、
例えばモールと駐車場のような短い距離を歩くかわりに
約2000ルピア(20円)程の収入を得ているんだよ。”(友人談)
そういうことだったのか。よそよそしい二人組の謎が解けました。
こんなところにもビジネスを見出す子どもたちの発想力には脱帽ですが、
自身は濡れてしまいながらも傘をさしかけるその健気な姿勢に
なんとも言えない気持ちになりました。
インドネシアにおける児童労働の実態
UCW(Understanding Children’s Work)の2012年のデータによると、
インドネシアでは義務教育期間中であるはずの7歳―14歳人口のうち230万人が働いている、つまり労働を強いられているそうです。
もちろんインドネシア政府としても、こうした児童労働問題をまったく放置しているわけではなく、一時保護施設などを利用して2008年から2012年までの間に2万1963人を復学あるいは就学させました。
所轄の労働移住省は2013年度中にさらに1万1000人の子供を保護し復学させる目標を立てています。しかし、実態として児童労働がなくならない背景には貧困の連鎖があると言えそうです。
”ジャカルタとスラバヤで、6〜18歳のス トリート・チルドレソ300人から聞き取り調査をした結果、80.3%は両親の貧困が、19.7%は両親の社会・心理的関係障害が原因であることが明らかになった。”『中学校教育の義務化と未就学問題(インドネシアの教育事情 )』林陸雄
したがって、教育の重要性を十分に認知していない両親が子どもを労働へと送り出し、児童労働が日常化する要因の一つとなっているということができると思います。
おわりに
インドネシアでは1995年に中学校教育の義務化が始まりましたが、
実態としては依然として労働を迫られる児童が一定数いることは明らかです。
政府や教育機関の支援だけでなく、人々、特に貧困層の親に対する意識改革を行う必要性があるのかも知れませんね。