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ホーチミンのバックパッカー街と呼ばれるフォングーラオ通りには安価な宿がひしめきあっている。
だがしかし、こんなにも安くていいのだろうか、
こう思うようになったきっかけは、ベトナムのホーチミンを旅行していた際に遭遇した風景が
目に焼き付いてしまったからだ。

2015年12月某日、私は友人と2人で活気のあるホーチミン中心部に位置する
とあるホテルに宿泊した。3泊4日で金額は日本円にして10,231円。

一人一泊あたりわずか1,250円あまりの出費である。
これで温水シャワー、無料wifi、簡単な朝食まで付いていた。
部屋も清潔に掃除され何一つ文句のない快適なホテルであったのだが・・・

滞在初日、迎えてくれたのは清々しい表情をしたベトナム人男性であった。
流暢に英語を話す彼の年齢は30代手前といったところであるだろうか。
ひっきりなしに客が出入りするそのホテルの小さなフロントで常に対応を迫られていた。

来る日も来る日も、
彼は私たちがホテルへ帰ってきた時に
フロントで顔を合わせていた。

時は過ぎて滞在終了日、
ホテルを出るのはフライトの関係で早朝5時。
眠い目をこすりながらフロントへと足を運ぶと
なんと。例の男性が、他のスタッフと2名でフロントのイスで仮眠を取っていた。

私たちの気配を感じた彼らは私たちに宿泊代の支払いを求めた。
カードで払うとチャージ料がかかるので、
現金で支払いをした時、
彼の目にはまるでこれだけのお金しか入らないのかといった、
物悲しい表情を浮かべていたように見えてなんとも不憫に感じてしまった。

私たちがこんなにも低価格でサービスを受けられるのは
彼らの労働を搾取してしてるからではないのだろうか、
少なからずこのような考えが頭をよぎったのである。

現状として、ホーチミンにおけるホテルの稼働率は非常に高い。
たとえば、ホーチミン市にある Carabelle ホテルや Sofitel Plaza ホテルでは、
年末 3ヶ月の平均客室予約率が例年10月には90%を超える。
またSheratonホテル、Omni Saigonホ テル、Renaissance ホテルなどでも
年末の客室稼働率は年々上昇しており、100%に達する日も少なくない(Thanh Nien:ベトナム青年連合会機関紙)。

こうした加熱する観光需要を充足するに足る早急な観光供給の増大が求められているのも事実であるが、

一方で、外国人観光客の旅行中の支出額は伸び悩んでいる。
Nguoi Lao Dong(ホーチミン市労働協会機関紙)によれば、外国人旅行者の平均支出額は
東南アジアにおいてベトナムよりも経済の発展度合い国々、
例えばタイは 1200~1500 ドル、シンガポールは 1500~2000 ドルであるのに対し
ベトナムは比較的裕福な旅行者でさえ300~700ドルとかなり劣っている。

また、タイ、シンガポール、マレーシアでは、
医療観光や長期滞在観光といった新しい形態の観光に対する取り組みに力を入れている。
医療観光の範疇は広く、自国では受けられない高度な医療行為を目的に訪れる場合から、
検査や静養といった健康サービスを目的とする場合まで様々である。
滞在日数や支出額において通常の旅行者を大きく上回ることから近年注目を集めている観光商品の一つである。

また、長期滞在観光の振興には治安の安定や交通、通信、医療、衛生といった生活インフラの充実が必要であるが、
こうした国では、長期滞在観光の発展が逆に社会基盤のさらなる拡充を促す効果を期待している。

しかし、現状としてベトナムでは観光療養施設の建設にようやく着手し始めたばかりで
このような高付加価値の観光業へのシフトはまだ十分とは言えない。

したがって、リーズナブルな観光地から上質なサービスを提供する高級な観光地へと
イメージを変換しさらなる観光の振興を図ることでベトナムにおける観光業の潤いをもたらすだけでなく、
旅行客の平均支出額を増大させて労働者の雇用状況の改善ができるのではないかと考える。

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