はじめに
インドネシア共和国は、近年、著しい経済成長を成し遂げています。
2000年初頭には、2000億ドルであった名目GDP(国内総生産)は、2016年には12000億ドルとなっています。
この15年程度で右肩あがりの成長をしています。
しかし、この15年でほとんど変化していない数値があります。
それは、インフォーマルセクターの割合です。
インフォーマルセクターとは、近代的な制度に基づく企業や公共部門で働いていない人々を指します。
イメージとしては、個人的に路上で物を売っている人や、靴磨きをしている人などが含まれます。
こういった、企業等に雇われることなく生活を送っているインフォーマルセクターが、労働者に対して70パーセント近くいて、この数字は15年近く変動していません。
インフォマールセクターが多いことが、なぜ問題であるか疑問を持つ人もいるかもしれませんが、これには大きな問題です。
こういった人々が多い問題点は、徴税機能が働かないことにあります。
インフォーマルセクターの人々は、正規の組織等に所属または登録していないため、所得税等の税金は支払いません。
つまり、政府は十分に税金を集めることができないのです。
インドネシア政府もこの問題を大きな問題として捉えていて、様々な施策を試みています。しかし、こういった問題に政府だけでなく、企業が貢献している例があります。
その企業こそ、本日紹介するバイクタクシー会社のGojek(ゴジェック)です!
Gojek(ゴジェック)はインフォーマルセクターの削減に貢献している会社なのです。
それでは、もう少し詳しく見ていきましょう。
1 Go-jekとはどんな企業
GOJEKは、2011年にハーバード大MBA卒のナディム・マカリムによって創業された、インドネシアの大手配車アプリ会社です。
インドネシア各地に広がるバイク運転手(オジェック)をGOJEKの運転手として登録し、アプリと連動させて、消費者と結びつけています。
GOJEKのアプリを開いて目的地を入力すると、GPSと連携しているため、自分の近くにいるバイクタクシーのドライバーが自分の現在地まで来て、バイクで目的地まで連れて行ってくれます。目的地に着くと、距離で定められた料金1)値段は1km~10kmまではRp.12.000(120円程度)、10kim~15kmだとRp.15.000(150円程度を支払うといった流れになっています。
ドライバーは事前に入力した目的地まで連れて行ってくれるので、拙いインドネシア語でも利用することができます。
その他、配送や食事のデリバリー、買い物も頼むこともできます。
2 どのように貧困・インフォーマルセクターを削減
それでは、どのようにGOJEKがインドネシアの貧困やインフォーマルセクターの削減に貢献しているかを見ていきましょう。
2.1 安定的な給与
このGOJEKがどのようにインドネシアの貧困削減に貢献しているかというと、一つはドライバーへの安定的な給与の提供です。
GOJEKが台頭する前から、インドネシアにはオジェックと呼ばれるバイクタクシーがありました。
しかし、このバイクタクシーは個人で行われていたため、需要は大きいものの信頼等の問題で、継続的にお客さんを捕まえることができませんでした。
こういった、ドライバーの不安定な所得といった問題を解決するために、GOJEKは作られたのです。
GOJEKは、顧客とドライバーをつなぐアプリを構築しました。また、信用を高めるブランディングや、外見でGOJEKの登録者だとわかるようにユニフォームを無料提供もしています。こういった活動により、GOJEKに登録したドライバーは、以前よりも安定した給与を手に入れることができるようになったのです。
現在では、インドネシアのジャカルタを始めとする都市で、20万人程度のドライバー登録者がいます。
このように、交通渋滞が多いインドネシアでは、大きな市場であるバイクタクシーのドライバーが、より安定的に給与を得られるシステムを構築したのです。
2.2 ローンの提供
もう一つは、ローンの提供です。実は、GOJEKは金融業にも着手しようとしています
GOJEKのドライバーになることで、ローンを受けることができます。
今後、ローン整備が進んでいくことで、現在はバイクを購入できないより貧しい層が、バイクを購入して、ドライバーになるということも考えられるかもしれません。
2.3 給与の配給方法
給与の渡し方が、インフォーマルセクター削減に貢献しています。
GOJEKに登録すると、ドライバーは銀行等に口座を開設して、その口座を経由して給与をもらうことになります。このことで、労働者に支払われるお金の流れが可視化しやすくなります。また、税引きで給与を渡すことも可能となります。
このようにして、今までインフォーマルセクターとして活動していたバイクタクシーに従事する人々が、フォーマルセクターへ移行していきます。
おわりに
いかがだったでしょうか?
GOJEKは、まだ黎明期で、様々な課題に直面しながら発展しています。
先日も、米投資会社コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)と出資交渉をし、1億ドルの見通しも立っているようです。また、米プライベート・エクイティ・ファンドのウォーバーグ・ピンカスもゴジェックの資金調達計画への参加を検討していて、GOJEKの資産評価額は12億ドルに達する見通しもあります。2)日本経済新聞,アジアニュース, 2016年7月21日
今後、インドネシアやアジアを代表する企業になっていく可能性もあります。
インドネシアの貧困を削減していき、インドネシアの成長を引っ張っていくだろう、この新興企業に注目です!!
References
1. | ↑ | 値段は1km~10kmまではRp.12.000(120円程度)、10kim~15kmだとRp.15.000(150円程度 |
2. | ↑ | 日本経済新聞,アジアニュース, 2016年7月21日 |